シンガポール漂流生活

シンガポール在住歴12年、日本語教えたり、絵描いたりして、なんとなく生きてます。

北海道出身、作家、片岡翔

もう数週間前のことですが、ある日突然、日本から郵送物が1つ届きました。

開けてみると中には2冊の本が! 

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これは、なにを隠そう私の最も才能あふれる友だちの一人、映画監督であり、脚本家であり、小説家でもある、私の古い友人、片岡翔くんが書いた本でございます。

私がまだこの2冊を読んでない事を知った片岡くんが、わざわざ送ってくださいました。ありがたき幸せ

 

片岡君とは、私が20代のときに札幌の円山動物園内にあったキッドランドという遊園地で一緒にアルバイトをした仲です。一緒にローラーコースターなどを操作したりしました。

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平日は1日の客が数人しかいないときもある、とてもヒマなバイトで、ある男の子が1人で乗ったときに「これほんとに安全なの!?」などという愚問を投げかけてきたので、安全バーを下ろしながら「大丈夫。去年は2人しか死人が出てないんだよ」などと言って子供を恐怖のずんドコに突き落として2人で笑ったりしたものです。

 

そんな片岡君も、映画監督を目指して上京し、今ではなかなか有能な映画監督、脚本家、そして作家になりました。

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ちなみにこのこの写真を見て思い出しましたが、写真の中で彼が着ているTシャツの絵は、ずっと昔に私が描いてあげたものです。インパクトあるわ〜

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ちなみに片岡君は、知る人ぞ知る札幌の中心部にあった「人形屋佐吉」という人形屋のオーナー、片岡佐吉さんの息子です。私は店が開いているのを一度も見た事がなく、片岡君に会って知るまで、謎の店としてずっと恐れていました。

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東京では渋谷に「マリアの心臓」という人形ミュージアムを持っていて(今は京都、大原に移転しました)片岡くんはそこで店番をしていたので、東京在住中はよくそこに行って、片岡君とお互いの近況報告をしたりしていました。そうとうヤバい店でした。

https://www.mariacuore.jp/

映画監督のティム・バートンも来たことがあります。

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そして弟は片岡双六(すごろく(本名は翼))という、プロのマジシャンです。

うる覚えなんですが、たしか昔シンガポールに双六が遊びに来て、なぜか我が家の親戚の集まりに参加してマジックを披露してくれました。目の前でフォークをグニャグニャにして、たしかそのフォークを記念にもらったような記憶が。

どこやったかなあのフォーク。

消しちゃった?俺もフォーク消しちゃった?

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この兄弟とは東京にいたときよく一緒に遊んで、みんなで「人狼」をやったりしました。もう十数年前のことですから、当時は人狼を知ってる人はほとんどいませんでした。この兄弟の考察力と人を騙す能力はヤバいですから、激怒する人、泣く人とか続出してましたよ。

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そんなおちゃめな片岡家のみなさんとは、本当に思い出がたくさんあります。

ああ懐かしい。

 

シンガポールに来てからは少し疎遠になり、お互いの道を着々と生きてきたわけですが、片岡くんの小説を読むと、彼のこれまでの生き様が伝わってきます。

 

彼が最初に書いた小説は「さよならムッシュといって、表紙は「浦安鉄筋家族」・・・じゃなくて「鉄コン筋クリート」の松本大洋です。

さすがに私のところに装画の依頼はきませんでした(笑

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小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。
そのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、しゃべりだし、以来、無二の親友になっていたのだ(もちろん、世間には内緒にして)。
そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗に大きな転機が訪れる。

 

そして2作目が、可愛い熊さんの表紙が目立つ「あなたの右手は蜂蜜の香り」 

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ひとりぼっちのクマと、ひたむきな少女。心がぽうっとあたたまる、究極の愛の物語。あたしのせいで動物園に入れられたクマの「あなた」を、必ず救い出す。どんなことをしても。雨子はそう誓った日から、親友の那智くんとも離れ、飼育員になるため邁進する。だが、それは本当に「あなた」の望むことなのか。大人になった雨子が出した結論は――。

 

そして待望の最新作が、非常に怪しい表紙の「ひとでちゃんに殺される

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宙を舞うスキー板が、地下鉄の鉄扉が、墜落する信号機が、次々と呪われた生徒の首を断つ……。怪死事件が相次ぐ教室に、謎の転校生がやって来た。「縦島ひとで、十六歳です」圧倒的な美貌で周囲を虜にし、匂い立つような闇を纏う彼女の正体は!? 助かるためには誰か一人を生贄に差し出すしかない――悪魔に魅入られた高校生たちが迫られる究極の命の選択。

 

最後のひとでちゃんが少し異色ですが、どの作品も命、命の価値、宿命というものがテーマの1つにあると、私は感じました。

「どうして人を殺しちゃいけないの?」そんな事を考えたことはありませんか?

恋人か両親か、どちらか命1つしか救えないとしたら、あなたはどちらを選びますか?

実はそこにはちゃんとした答えがあって、でも真剣に考え抜いた人にしかわからない、そんな事を片岡くんの作品は言っているように、私には思えました。

 

そして大人になってみんなが忘れてしまった、些細な事を、シンプルな事実を、いちいち思い出させてくれます。飛行機の窓から下を見下ろすと、一面緑の大きな森が見えて、もし飛行機が墜落しても、フカフカな森がクッションになって助けてくれるような気がする、とかね。

彼の作品を読むと、また縁石の上をバランスを取りながら歩いたり、横断歩道の白い部分だけ踏んで渡ったりしたくなるかもしれません。

大人がバカバカしいと思うことのほとんどは、子供が無意識のうちにしてしまうことで、大人がいつもしていることは、子供なら絶対にしないような事ばかりです。

 

そういえばある本にこう書いてありました。

人の世の常識というのは、神の目から見れば狂気でしかない

 

 

もし興味を持ってもらえたならば、ぜひ彼の作品を読んでみてください。

これは彼の友だちとして言うのではなく、一読者としてオススメしています。

もちろん彼の事を知っているから面白く感じるというお得な点もけっこうありますけどね。例えば2作目の「あなたの右手は蜂蜜の香り」では、舞台が私たちの出身北海道で、倶知安(くっちゃん)町とか、羊蹄山とか、懐かしい地名の他に、私たち二人が働いていた遊園地の同僚の名前とかも出て来て、非常にグッときました。

 

ああ懐かしい

そしてせつないなぁ・・・

 

 

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