シンガポール漂流生活

シンガポール在住歴12年、日本語教えたり、絵描いたりして、なんとなく生きてます。

北朝鮮から脱北した日本人など存在しない

もう去年になりますが、実は(自分の中での)偉業を1つ成し遂げました。

それは、英語の本を1冊読み切ったことです。

 

英語が堪能な人には、なんだそんな事、と思われるかもしれませんが、私はあまりペラペーラではないので、今まで挑戦したことはあるものの、読み切ったことはありませんでした。

でも去年は本当に退屈で、時間の有り余った年でしたから(今年はもっとだよ)読書好きな奥さんと一緒に図書館に行って、ビビビと来た本を手に取り、家で読み始めました。

 

その本とは

 

A River in Darkness

[ Masaji Ishikawa ]

 

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昔々あるところに、在日韓国人の男性がいました。

彼は13歳のときにひょんなことから家族で北朝鮮に住む事になったのですが、そりゃあもうひどいひどい暮らしで、死にものぐるいでなんとか生き延びました。そして30年後、なんとか脱北し中国へ渡り、そこから日本大使館の助けで日本へ帰還しました。

 

というのがあらすじです。

 

もちろん、わからない単語ばかりで、辞書を片手に片っ端から調べながら読んだのですが、「脱北物語」という話の筋が割と想像しやすい内容だったので、2週間くらいかかったものの、なんとか最後まで読み終えることができました。

 

驚くべきは、わからない単語がおそらく100個くらいはあり、全部調べたのですが、現在はひとっつも覚えていないということです。自分がここまで物覚えが悪いとは思いませんでした。

 

あらすじよりも、もうちょっと詳しい話のすじを言いますと

著者が北朝鮮へ家族で渡ったのは、戦後まもない頃でした。貧しい家で、ものすごく暴れん坊な韓国籍の父ちゃん、優しく大人しい日本籍の母ちゃんの間に生まれた著者には、二人の妹もおりました。

著者が13歳のときに、朝鮮総連だかなんだかが、今北朝鮮へ移住したら、バラ色の生活が待っているぞ!日本はこんなに貧しいがあそこは天国だ!と言って父ちゃんをそそのかし、家族は北朝鮮へ移住しました。

しかし北朝鮮ではぼろっちい掘建て小屋に住まされ、過酷な重労働も強いられ、おまけに差別まで受けるという、とんでもない生活が待っていました。

それはもう壮絶で壮絶で壮絶な暮らしです。毎日が餓死寸前。家族みんなボロボロになりながら、なんとかその日その日を生き抜きます。

 

読んでいて、こんなひどい暮らし、人生って本当にあるのかな?たとえどんなにひどい所に住んでいても、人生には必ず楽あり苦ありで、楽もかならずやってくるはずなのに。なんでここまで踏んだり蹴ったりなのかなと、ちょっと腑に落ちませんでした。

 

そしてなんとか30年間生き延びますが、両親は苦労の中で死んでしまいました。さらに著者も、このままでは本当に死んでしまうという最大の苦境に遭遇し、脱北を決断し、一人で命からがら中国への脱北を成功させます。

そして現地の人に助けられ、なんとか日本領事館へ辿り着き、そこでも領事館の人達の尽力のおかげで、非公式的に日本へ帰ることができました。

めでたしめでたし

 

とここまではいいのですが、日本へ帰ってきたものの、その後の面倒を見てくれる人もおらず、非公式に帰ってきたので政府や自治体の援助も受けられず、孤独な生活を送ることに。。。

 

嗚呼どこまでいっても辛い人生。

悲しい話は現実味があって好きなんですが、ここまでくると逆に現実味がありません。

 

というかトピックが北朝鮮というだけで、プロパガンダの可能性が十分にあるので、たぶん相当話を盛ったり、ある事ない事も書いたんだよ本が売れるために。

もしかしたら今はそこそこ本も売れて、良い暮らししてたりして。

なんて思っていたのですが、このあと衝撃の事実が!

 

著者の現在の状況や、おそらくオリジナルであろう日本語版の評判はどうなのか、等等をネットで調べてみたのですが

 

日本語版のタイトルは「北朝鮮大脱出 地獄からの生還」

初版発行日は2000年

そして著者名は「宮崎俊輔」!?となっています。

 

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そして英語版に書いてあったおそらく本名であろう「いしかわまさじ」という名前で検索すると、 石川昌司「週刊北朝鮮」 という、「週刊実話」がソースになっているlivedoor NEWSの記事がわずかに出て来るのみ。

 

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実は本にも、領事館の人の援助で日本に帰国できたが、あくまで非公式で行われた事なので、この事は絶対に口外しないようにと、領事館の人達に言われている描写があるので(数年後に本まで出しちゃったけど)その理由によるのではないかと思われます。

 

これを知ったとき、自分の中でこの本の内容が、急に現実味を帯びてきたように感じました。

この人もこの体験も本当にきっと存在し、しかしこの複雑な事情により誰にも打ち明ける事が許されず、時を経てなんとか偽名で本を出版したのだろう・・・。

 

身の上を明かせないというのは、なんともどかしく苦しいものでしょう。

このようなジレンマと共に生き続けている人が、世の中には五万といるのだろうなぁと、ふと思いました。

 

でもね、私には隠さなくてもいいんですよ。

在日韓国人でも、創価学会員でも、エホバの証人でも、LGBTでも、HIVでも。

もっと言えば、隠してもいいんですけどね。

言いたい事は言ったほうがいいですし、言いたくない事は言わないほうがいいんでしょう。

 

石川さんはよほど言いたかったのかな。

さらに時を経て2018年に、この英語版が出版されたようです。そして世界中でセンセーションを巻き起こし、シンガポールの図書館に置かれ、英語学習中の日本人のオッサンに読まれるまでになりましたよ。石川さん!

 

この本に興味があるかたは、ぜひお近くの図書館かAmazon shopに行ってこの本を探してみてください。

 

 

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