シンガポール漂流生活

シンガポール在住歴12年、日本語教えたり、絵描いたりして、なんとなく生きてます。

インドのバラナシに行ってきた その4

その3はこちら

yangpingsan.hatenablog.com

 

 

 

屋上で猿の群れに遭遇

 

Nさんを見送った次の日の朝、私はガンジス河の朝日を見ようと5時半に起き、屋上へ上がってみました。屋上のドアを開けた瞬間、私が見たものは猿の群れの大移動でした。

目の前を猿が4、5匹、左から右へとのそのそと4足歩行で歩いています。

そして屋上の端まで歩いたかと思うと、隣のビルへぴょんと飛び移ります。視界の左からは、ビルを登って来た猿が現れ、また視界の右へ移動し、隣のビルへひとっ飛びです。

 

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屋上の階段を登って見渡すと50m四方の建物の上に、全部で4、50匹の猿がいて、みんなのそのそと西から東へ、建物の上を飛び移り移動していました。

そして不意に後ろから現れた猿に、背中に飛び移られ、ヤバいと思ってジッとしていると、背中を軽く甘噛みされました。最悪です。

まぁTシャツの上からですし、傷もつかない甘噛みだったので、まぁいいかと放っておきましたが。

 

バラナシは朝に限らず、いつも至る所に猿がいますが、朝はとくにゴミを漁ったりして食べ物にありつくチャンスなのか、けっこうアクティブです。

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猿の群れが大方去ったので、気を取り直して朝日の写真をパシャッと撮りました。

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次の日からも毎朝屋上に登りましたが、群れを見れたのはその時だけだったので、まぁ珍しいものが見れてラッキーだったのかもしれません。

 

 

朝のガンジス河に癒される

 

朝のガートを散歩に行こうと思って、屋上から1階まで降りていくと、玄関の前に奇妙なものがありました。

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スタッフのミイラでした。巨大なサナギのようで気味が悪いです。

ゲストハウスの入口には鍵がかかっていたので、仕方なくサナギに話しかけると、すぐに脱皮して鍵をはずしてくれました。そしてまたサナギへ。

 

すぐに裏手のガートへ向かうと、シャンシャンシャンと、シンバルのような楽器の音が聞こえてきます。ガートを降りていくと、もう大勢の人が集まって、祈ったり、沐浴したり、マントラのようなものを唱えているグループもいました。

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すごく神聖な感じがしました。やっぱり祈りは朝に限ります。

朝っていいな、結婚式とかも早朝にやったらいいのにな、と思いました。

 

彼らはここで沐浴をし、この河の水で歯を磨いたり、ときには飲んじゃったりするわけです。ガンジス河は全てを清める聖なる河ということで有名ですが、ここに死体でも排水でもなんでも流してしまうせいで、不衛生な河ということでも有名です。(上流はキレイですが)

私も10年前にここで肩まで浸かってみたことがありますが、そのときは隣にいたインド人のおじさんが、なぜかご丁寧に石鹸を貸してくれました。私は貸してもらった手前、その石鹸で身体を洗うふりをしたんですが、キレイにしてるのか汚してるのかよくわからない感じでした。

 

河には朝日に照らされたガートを見るために、たくさんのボートが出て、観光客はガートで祈りを捧げる信者の姿を、パシャパシャと写真に納めていました。まさに聖と俗。

インドの中で最も神聖で、最も汚い場所がここバラナシです。

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大沢たかおと共演したインド人現る

 

朝のガンジス河を拝んだ日の午後、町を目的もなくブラブラしましたが、ひっきりなしに声をかけられます。私が泊まっているホテルの周辺は、ベンガリー・トラという面白い名前の地区で、外国人が多く泊まっている場所なんですが、驚いたことに、ここには日本語を話すインド人が大変多くいます。

 

歩いていると、色んな店の人が、「コンニチハー♥︎」「オハヨウゴザイマス♥︎」「ドコイクノ〜?」「オミヤゲドウデスカ?」と声をかけてきます。

話を始めると、そこそこ話せて、「ニホンジント、スグワカルヨ」とか言ってきます。

ガンジャカウ?、ハシシスウ?とかも、もちろん言ってくるんですが、一度「本当に私はワリワナは吸わないんですよ」と説明したら、カミナガイカラ、ダイスキダトオモッタと言われました。

 

前に来たときは、本当に日本語が堪能なソナという男性がいて(ガイドブックにも載っている有名な人です)、色々とバラナシについて教えてくれたりお世話になったので、今回も挨拶したいと探したんですが、どうやら去年あたりに、日本人の女性と結婚して日本に移住してしまったんだとか。

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残念だなと思っていたら、今回もう一人すごい奴に話かけられました。

 

大きな通りを歩いていると「ドコイクノ〜?」と、丸坊主で、小柄でガリガリの、カラテカの矢部(芸人)の眼力を強くしたようなインド人が話しかけてきました。

軽くあしらおうとしたのですが、彼に「深夜特急知ってる?」「おれ23年前に大沢たかおと共演したよ」と言われ、興味がわいたので、すぐ近くにある彼のお土産屋に行って、話を聞いてみました。

 

 彼の名前はムケシュ。23年間に大沢たかお主演の「深夜特急」というドラマのロケがここバラナシで行われ、そのときに大沢たかおに話しかける物売りの子供の役で出演したんだとか。

デリカシーのない私はすぐに、ギャラはいくらもらったのと聞くと、8000Rp(当時のレートで19,000円くらい)と言っていました。

それから日本語を自分で勉強して、日本人の奥さんをもらって日本にも行ったことがあるが、もう別れてしまい、現在子供は娘が3人いて、一人で育てているのだとか。

 

ムケシュは旅行者の間ではけっこう有名人らしく、ネットにも彼の事がたくさん載っていましたが、興味がある人は、以下のサイトなどを参考にしてください。

『 ヴァラナシ ―「深夜特急」とぼったくり少年の夢―』バナーラス (バラナシ)(インド)の旅行記・ブログ by がまだす@熊本さん【フォートラベル】

 

下の写真は、ネットから見つけた、ドラマに出演したときのムケシュと、2009年のときのムケシュです。

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ムケシュの小さなお土産屋には、日本語の本がたくさん置いてありました。デポジットだけ預かり、無料で貸し出しているのだそうです。その他には、Tシャツ、お茶、ダボダボパンツ(彼がそう呼んでました)などのお土産を売っています。

彼は日本人旅行者に、気軽にここに来てもらい、なにか困ったことがあれば助けてやり、聞きたいことがあれば答えてやり、そこで信頼関係を作り、その上で納得してお土産を買っていってほしいのだとか。

ムケシュ曰く

今までのインド人は、その日だけを考えて、日本人を騙してばかりだったけど、これからはそれじゃだめなんだよ。僕は明日を考えて商売をしたいのよ。

 

私はほぼ毎日散歩のときに、ムケシュに挨拶され立ち話をしたり、あとはタバコも一本もらい、チャイも一杯ごちそうになったんですが、結局あまり気に入ったものがなかったので(そもそもお土産を買いません)何も買わずにバラナシを去ってきてしまいました。

 

一度彼に、最後はどこで死ぬの?(変な質問ですね)と聞いたんですが、彼は表情一つ変えずに、ここ、と即答しました。日本語を巧みに操る、ちょっと波瀾万丈な人生のムケさんも、やはり敬虔なヒンドゥー教徒の一人であり、ここバラナシで死に、焼かれ、灰になり、その灰を家族にガンジス河に流してもらうのが、最上の喜びなんだとか。

後日ですが私はふと、長渕剛の「ガンジス」という歌の歌詞の一節を思い出しました。

 

旅をするのは 帰る家があるからだ
さすらいの旅ほど淋しいものはない

 

かれらは死後に自分の魂が帰る所を知っている。だから迷いなく、苦しみも不条理も受け入れて、人生という旅を続けられるんじゃないか。

 

なんちゃって

 

 

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